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◇
「本日は個室ですし、お一人だけでしたら付き添いも・・・」
お医者さんからの説明の後、看護師にそう言われて思わずカイトと目を合わせた。
…きっと、付き添いたいよね。
でも…
『お帰り、ミヤビ!』
どうしても、今日だけはミヅキちゃんの側に居たい。
ぐっと拳を握りしめてから深々と下げた頭
「…お願い。今日だけ譲って。」
溜め息が上から降ってきた。
「別に俺に断る必要も、許し得る必要もないだろ?」
「何かあったら連絡しろよ」ってまた俺の頭をポンと軽く叩いて帰っていくカイト
俺の気持ちなんてお見通しなはずなのに…
ありがとう、カイト。
お互い何となく口が悪くてケンカになる事もしばしばだけど、どっか通じる所があって、出会った時から沢山、俺の事救ってくれた。
俺の大切な人の一人だね、カイトは。
ベッドで眠るミヅキちゃんの横に静かに腰を下ろした。
布団から出ている左手をそっと両手で包み込む。
…ミヅキちゃん。
そうやって改めてちゃんと思えるのはミヅキちゃんのお陰だよ?
きっとあのまま園長を殺してたら
紗香の影を引きずったままの俺は、大事な人達を悲しませてたって今はわかる。
ミヅキちゃんがそう思わせてくれたんだよ?
少しだけ薬指がピクッと動いた気がして、その指に唇で挟み込むように触れた。
ミヅキちゃんが望むなら、皆と…ミヅキちゃんとずっと一緒に居るからね?
俺はさ、きっとミヅキちゃんの中でカイトみたいな存在にはなれないんだろうけど
それでも俺だから出来る事がきっとあると思うから。
これから先、ミヅキちゃんの事を俺なりに守るからね?
だからさ
「目が覚めたらまた一緒に笑ってくれるでしょ?」
頬につけた掌がやけに心地良くて
ぎゅっと握って目を閉じたら夢見心地になってったけど
そこにはもう崖も暗闇も存在しなくて
探偵事務所の皆の笑顔と
『ミヤビ!』って頬を包んでくれるミヅキちゃんの温もりだけが存在していた。
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