第1章 指先の秘密

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 けだるそうにこっちを見るタケルは色っぽさ満開だ。そんな・・・そんな流し目で見ないで~!!・・・ってか今はそうじゃなくて! 「何でここで寝てるの!?」  あたしはそんな微妙な質問しか出来ないほどうろたえていた。頭の中では、そこじゃないでしょうが!って自分をハリセンで叩く。  タケルは片手を頭に突っ込み、伏し目であたしをちらりと見て笑う。 「だって他に寝るとこなかった」  ・・・あ、そうですか。・・・いやいや、だーかーらーそうではなくて。 「えーっと。・・・ちょっと落ち着く時間が必要なの、あたし。あのさ、しばらく消えててくれない?」 「ヤダね」  あたしは目をぱちくりさせた。  ・・・・あれ?葉月タケルって、こういうキャラだったっけ?  昨日からの言葉を思い出してみても、何か、上から目線というか、俺様というか、エラソーじゃなかった??  だってだって、先生の描く葉月タケルはエリートのサラリーマンで、皆に優しくて、特に女の子には本当に優しくて、気も利いて、おまけに美男子で、全く、全然俺様なんかじゃなくって、むしろ王子様で・・・。  あたしがつらつらと考えつつそれまでとは違うショックを受けて黙っていると、当の本人はよいしょ、とベッドから降りて、それはそれは見事な肉体を目の前にさらけだして大きく伸びをした(やっぱり裸なのは上半身だけだった)。  そして長めの前髪がかかった綺麗な瞳であたしをヒタと見て、軽い微笑をした。 「腹、減った」 「・・・はい?」 「腹、減った」 「・・・はい」  彼は長い足で一歩で近づき、素早く腰を落としていきなりあたしの目の前に綺麗な顔を近づけた。あたしはこれ以上下がれずに、驚いたままの顔で背中を壁に押し付ける。 「なななな何っ!?」  彼は吐息を感じるくらいに顔を近づけて、低い声でゆっくりと言った。 「腹が、減った」  茶色の瞳の中に、目を見開いて縮こまるあたしがうつっている。あまりに近すぎて、頭が酸欠でくらくらしてきた。
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