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「うん?」
首を傾げる彼にあまり期待せずに質問を投げかける。答えはないかもしれない。だけど、やっぱり聞いておかなきゃ―――――
「どうやって実体化したの?」
お風呂から上がったら、既にこの人はここにいた。あたしが居なかった間に一体何があったのだろうか。
彼はこちらを見もせずにゆっくりとカップを傾けている。そして長い指を振って、促した。
「とりあえず、俺の自慢のコーヒー飲めよ」
・・・そうですね。小さく呟いて、自慢らしいコーヒーを口に含む。ふんわりと香りが広がって、素敵な苦味で口の中が一杯になる。温度もちょうどいい。あたしはつい、瞬きをした。
「・・・美味しい」
その感想に満足したらしく、彼は一人で頷いた。
そして体をひねって、自分の首筋を長い指でさした。
「俺の首の、これ。お前が書いたんだろ?」
あたしがGペンで書き足した*が、そこにはホクロみたいにあった。
・・・あら。
あたしは驚いてそれを凝視する。
「これが、お前の爪先に弾かれた時に体が引っ張られた。触れた瞬間に自分の世界から離脱したんだ」
あたしは何とか言葉を搾り出した。
「・・・この星型が、原因?」
「アステリスク」
「え?」
「アステリスクって言うんだよ、こんなマークを」
・・・そうなんですね、と呆然と繰り返す。この星型が・・触れて、出てきた?確かにあたしは爪先でイラストを弾いた。それが原因なの?
目の前に立つ美形の男が。憧れて大好きな漫画のキャラクターが、美しい人間になって?
瞼の裏におばあちゃんのキラキラした瞳がうつった。笑い声まで聞こえるようだった。
・・・・・すごい、魔法だ。
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