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窓の外を桜が舞う。
起き上がったままのベッドの上で、バイトの日だけは鳴る目覚まし時計が喚いた。それを左手で淡々と止めて、そのまま指先を見詰める。
あたしの人差し指の爪に、星型みたいなマークが浮かび上がったのに気付いたのは、おばあちゃんの葬儀中。
沢山の花の中に眠るおばあちゃんに最期の別れをした後だった。
風が吹いて、出棺を待つ人たちの服や髪をはためかす。
あたしはたくさん泣いたためにスッピンで、家族と一緒にそれを見ていた。
そしてまた潤んできた目を拭くために手を顔に近づけて、ふと、気付いたのだ。爪先の小さなマークに。
爪の下のほうに小さく浮かび上がっていて、最初は手が汚れたんだと思って、葬儀が終わってから石鹸で洗ったりした。
だけどどうしても取れなかった。
注意を喚起するときに使ったりする「*」に似ていた。
何かのメッセージ?と思ってしばらく悩み、ハッとしたのだ。これが、おばあちゃんの最期の魔法かもしれないって。
・・・・有り得る。
だっておばあちゃんは言ったもの。力をあなたに使うって。
おばあちゃんは魔法使い。
それは、小さい頃からの祖母とあたしの二人遊びだった。
実際に、毎朝毎晩の万物へのお祈りをかかさないおばあちゃんには何かしらの不思議な力があったとは思う。
おばあちゃんが手をかけると瀕死の植物も生き返ったし、痛いお腹や頭だって触って貰うとすぐに治った。作ってくれるご飯は本当に美味しくて、体が喜ぶのが判ったくらいだったし。
あたしはそれを意思の力だと理解していた。
おばあちゃんは祈る力がとてもとても強いから、気とかオーラみたいなのが出て、みんなうまく行くんだって。
二人で遊ぶのは魔法使いごっこと決まっていた。
手の平からぱっと花を出したり、トランプを綺麗に飛ばしたりしておばあちゃんはあたしを楽しませてくれた。大きくなって、それはマジックと呼ばれるものだと判ったけど。
マジック・・・魔法。やっぱり魔法じゃん!!って、その時のあたしは興奮したんだった。
おばあちゃんはいつだって目をキラキラさせていた。
そして楽しそうに笑って、あたしにサプライズをくれたのだ。
あたしは爪をじっと見詰める。
・・・・おばあちゃん、今度は一体、何の魔法をくれたの?
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