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 下駄箱の中にもチョコレートの包みが入っている。侃は持ってきた紙袋に包みを無造作に詰め込むと、家路についた。  ベンチャー企業の今は亡き社長が、侃を可愛がり、養子にした。坂上が築き上げた会社を引き継ぎ、その財産を相続する者は侃しかいない。学業優秀で細面の整った顔立ち。その上に、天涯孤独という悲劇性も加わって、今の侃の境遇は少女たちの想像力を掻き立てるらしい。  若い肉体が思いがけなく手に入り、仕方なくこうした設定をしたのだが、こんな結果を招くとは思ってもみなかった。かさ張る紙袋を二つ抱えた侃は、ため息をついた。
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