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友世と暁子
「バレンタイン、手作りじゃないの?」
暁子(あきこ)は驚いたようにいった。
「だって。私達ずっと一緒に暮らしてるでしょ。いっつもどっちかが作った物、食べてるのよ。イベントの時くらい、デパートの物にしないと」
「友世(ともよ)が作った方が洵(しゅん)さん喜びそうだけど?」
「まあ、そうなんだけど・・・。私が『煉瓦亭』のチョコレートケーキを食べたいのよ」
「本音が出たわね」
友世は照れくさそうに笑った。
「暁子もそうしたら? 今年はね、高島屋の特設会場のブース借りたんだって。だから、お店まで行かなくても叔父さんのスイーツが買えるのよ。一緒に行かない?」
「泰己(たいき)も一緒でいい?」
「もちろん!」
泰己というのは、智則との間にできた一人息子だ。暁子は、高校卒業と同時に智則(とものり)と結婚した。卒論、院試と学業が忙しくなる前に第一子を産みたかったのだという。
「だって、仕込みから熟成まで十か月もかかるのよ!」
専攻している醸造学の実験のような言い方をして、あっという間に泰己を産んだのだ。
「明日、駅で待ち合わせでいい?」
「ええ。出掛けるの久しぶりだから嬉しいわ」
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