第1章

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 だが―― 『サンダー―――キィッッック!』  雷鳴雷光を纏う人影が、多腕の仏像の横腹に着弾し、仏像を真っ二つに折り砕いて、受付カウンターにまでふっ飛ばした。  人影は、一言でいうと特撮ヒーローのような容姿をしていた。赤と白と黄色のカラーリングの、流線形のスーツに身を包んだ七頭身の人形だ。そう人形だ。腕や足の関節部分に、金属色のパーツがある。  仏像を蹴り飛ばした人形は着地しないまま、空中で三回転して、脳みそのてっぺんに踵落としを打ち込んだ。 『キィィィィィィィィィィィ!』  べこっ、と踏まれた空き缶のように脳みそがへこみ、脳みそは口もないのに悲鳴を上げ、涙腺もないのに涙を上げてのたうち回る。 『うわぁ、キショい……』 「まったく同感だぜ。気が合うな、少年」  あまりに場違いな落ち着いた声に、スイが驚いて振り返る。  そして再び硬直した。  そこにいたのは、一言でいうならヤンキーだった。  オールバックに大きく後ろに流した、根元の黒い金髪。鋭く尖ったサングラスにライダースーツ。身長は百九十を超えている。  そしてその男の腕には、意識のない小柄な少女が抱えられている。根元から金色の長い髪。肌が日本人離れして白い。  ヒーロー人形がポーズを決め、少女とヤンキーの隣に立つ。 『兄さん、彼は?』 「こいつは第一世代だ。うまく使ってるみたいだし、別にいい。こっちが先だ」  男がヒーローに背を向けると、ヒーローが男のベルトからナイフを引き抜き、親指で鞘を外す。 『何を――』  スイが訊くより早くヒーローが、棒立ちになっていた脳みそタタリの主の首を切り裂いた。  動脈を切られ、勢いよく吹き出す鮮血。意識をタタリに持っていかれた主は、失われていく血液とともに意識を失い、膝をついて血の海に倒れ伏せた。 『なんで……?』 「ん? なんでって……助けた理由なら、うちの妹が気に入ったからで――」 『そうじゃなくて! なんでここまでしたんだ。殺さなくたって、気絶させればいいだろう』 『まあ道徳的にはそうかもしれないな』  ヒーローが少女の身体に戻り、少女が眠たそうな目を開き、ゆっくり体を起こし、ニッといたずらっ子のような強気な笑顔を見せる。 「でもねー、お兄さん。タタリ憑きは治らないんだよ。絶対に」 『……だから、殺すって?』 「全員じゃないけどな」と、サングラスの男が話を引き継ぎ、倒れている仏像を親指で指さした。
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