第1章

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(内勤は初めてだ。大丈夫だろうか。超能力の類も使えないしな。というかいつからだろう?)  ぼんやり考えながら、公園の外周をのんびりと歩く。 (そう言えば、あの美人さんはいつもこのくらいの時間だけど……)  頭に美犬の散歩をする、顔見知りの美人女性の顔を思い浮かべ、何となく違和感を覚えて、足を止めた。 (……人、少なすぎ?)  早朝の公演は、ジョギングや犬の散歩に来る人が多からずも来るものだが、今日に限って一人もすれ違わない。 (あ、なんだいるじゃん)  そう思った矢先に、進行方向に人影を見つけ、ほっと安堵して足を踏み出すが、しかし、相手の風体を確認して、僅か一歩で、スイは再び足を止めた。  黒いスーツに赤い変な柄のネクタイをしている。髪型はオールバック。鋭く、敵意を持った目つきでスイを睨んでいる。 「……何か用?」 「芦屋連勝だな」 「違いますけど? 僕は三好――え?」  スーツの男の身体から、紫色の光が立ち上り、両手に刀を持つ甲冑の人型が現れる。  スイは数歩後退して、男の三近い体積のありそうな 『見えたようだな』  甲冑が翁の面のような顔を震わせて、亡霊のような声を放つ。  甲冑の口元から覗き見えたその中身は、何も入っていない伽藍洞。男の身体から生まれる紫煙で満たされ、身じろぎする度、鎧の隙間から煙を溢れさせる。  鎧は軋みながら動き、ゆっくりと剣先をスイの鼻先へと向ける。  スイはまたも一歩後ろへ下がるが、その表情に怯えはなく、汚らしい物を見るような目で、甲冑の持つ刀を眺めている。 『同行してもらうぞ!』  甲冑が言うと同時に、スイは素早く踵を返し、来た道へ全力で走り出した。 (相手してらんないよ。あんな露骨に面倒なの) 「ん?」  十数メートル走ったところで、スイは足を止める。  いつの間にだろうか。パトランプのついた青い車両が横並びになり、三台かけて狭い道路を塞いでいる。車の奥には、やたらと大きな防具を着込んだ人間が十人ほど、大型の金属色の盾を持って控えている。警察の機動隊に似ているが、それにしてはかなり重そうな装備だ。  道路の右手は、高いフェンスがあり、奥には雑木林が続いている。そこにもちらちらと人影が見える。  振り返ると、スーツ姿の男がスイに追いついた。今はあの甲冑は姿を見せてはいない。  男は奥歯を噛みしめ、前傾姿勢になってスイを睨みつける。
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