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「投降しろ! 逃げ場はない!」
「身に覚えがないんだけど」
ガシガシと頭を掻いて溜息を吐き、スイは静かにスーツの男を睨み返す。
スイの見ている前で、再び甲冑が現れ、仮面の顎を砕きながら大声を上げる。
『罪を贖えええええぇぇぇぇっ!』
「あんたらも俺をいたぶりたいんだ。馬鹿だな。もっと早く思いつけば――先に殺しておけたのに」
ぐっと腰を落とすスイに、怒りの表情でも作ろうとしたのか、甲冑の仮面がひび割れる。
『おおおおおおおおっ!』
甲冑が雄叫びを上げ、両手に持った刀をスイに叩き付けるが、スイは横へ跳んで刀をあっさりと避ける。
前受け身を取りながらスイが見ると、甲冑の刃はしっかりとアスファルトに傷をつけている。
(ちゃんと切れるんだ。僕のは真似できないな)
「ま、大振りで見え見えだけど」
スイが右肩に手を当て、右手を握ってスーツの男へ突き出した。
右腕の義肢に青い光が灯り、左手でジョイントを切り離すと同時に、義肢が矢のように撃ち出される。要はロケットパンチだ。
『浅はか!』
男は棒立ちのまま、甲冑だけが振り返り、手にした刀を、迫りくる義手へと振り下ろす。
だが刃が義肢に触れる直前、義肢は慣性を無視して急停止し、刀を再び空ぶらせた。
「高いんだよそれ」
『なっ!』
驚く甲冑を笑うかのように義手は再び動き始め、スーツの男の腹を、身体が浮き上がるほど強く殴りつけた。
「ハジ警部?」
車の後ろにいた一人が、スーツの男に向かって叫び、スイは不思議そうに振り返った。
「はじ? なにそれ、どういう字――」
『動くなぁ!』
「え? うぉっと!」
振り下ろされる刀から、スイは転ぶようにして逃げる。
「あれ? 僕ならぶん殴られたら戻っちゃうのに。根性あるのかな」
スイがどこか暢気に物言う一方で、ハジと呼ばれたスーツの男の方もまた、一度甲冑を引っ込めて、スイの能力に思考を巡らせていた。
(『霊動力』は精神体が身体から出ていないと使えないはず。どうやって腕を動かした?)
腹を押さえるハジの横を、義肢が宙を飛んでスイの元へ戻り、腕の近くで浮かびながら待機する。よく見れば、スイの右腕は、義肢とは違う、おそらく一般人には見えない青い腕が生えている。
チッと、ハジは鋭く舌打ちをする。
(……なるほど。腕がないからか。肉体からはみ出した腕で、義手を操作してるのか。まぐれで手に入れた能力なら――)
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