第1章

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『恐るるに足らん!』  ハジが再び甲冑を出現させる。  同時に、スイも、次の手を、ポケットから取り出していた。  8センチほどの長いネジに、薄いシャフトが大量に貫かれ、ナットを蓋にして止められている。  スイが青い右手を翳すと、ナットの蓋が抜け、シャフトがこぼれだす。 「飛べ!」  シャフトに次々と青い光が灯り、連続して弾丸のように発射される。  無防備に突っ立っていたハジに数個のシャフトが突き刺さり、スーツの表面を削り取る。 『おのれ!』  甲冑がハジの前に立ちふさがる。  シャフトは甲冑にぶつかると、青い光を失い、鎧の表面を少し削って落ちてしまう。  スイのシャフトは瞬く間に数を減らすが、スイは落ちたシャフトに再び光をともし、手元に引き寄せ再利用する。 「再利用が効くんだ。弾切れはないよ。そっちは一度消さないと、傷は治らないだろ?」 『おの――れぇぇぇっ!』  撃ち抜かれながら、甲冑が刀を振り上げ、大きく力を溜めて、二本の刀を続けざまに別方向へ投擲した。  一等はスイの顔へ真っ直ぐ。スイは連射を止めないまま、軽く体を捻ってかわす。  遅れて投げられた刀は、スイの頭上にある道路標識のパイプを切断し、二つ連なった丸型の標識がスイの頭上へ落下する。  幸運だったのは、スイが工事現場勤務で、金属音の聞き分けに長けていたことだ。  金属の切断された音に気付いてスイは顔を上げ、落ちてくる標識に手を翳し、一瞬青い光をともして真横へ吹き飛ばした。  吹き飛ばされた看板は、森林側のフェンスに突き刺さり、貫通して大きな穴を空ける。フェンスの向こうにいた人影も、振り払われる虫のように看板から飛び退いた。 「ラッキー。道ができた」  シャフトの発射を再開しながら、スイはフェンスの穴へ向かって、後ろ歩きで走り出す。 『逃げるか!』 「うん。別にこっちは興味ないし」  言いながらフェンスに手をかけ、穴をくぐる。 『臆病者が! 逃がすな! 撃て!』  木の影から機銃を持った兵士が飛び出し、銃口をスイへ向ける。 「よっ」  兵士の一歩前に落ちていたボーリング玉大の石が跳ね飛び上がり、兵士のヘルメットに直撃してバイザーを粉々に砕き割った。 「構えたら全員同じ目だよ。これで」  道路標識が浮かび上がり、木の陰からのぞき込んでいた兵士が陰に戻る。 「賢くて好きだよ」  スイが走り出そうとした瞬間―― 「逃がすかあああああっ!」
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