第1章

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「ソイツ本当に入れるのかよ」  笑いかけてくれる野乃とは正反対に、晴直を睨めつけるアトリ。 「なんだよ。不満か」  晴直が軽く睨み返すと、アトリはより強く晴直を睨み返してくる。 「不満だね。こんなのを入れる必要性を感じないな」 「なら力尽くで追いだしてみたらいいんじゃないか? 腕相撲とか。負けたら力不足を認めてやるよ」 「腕相撲?」 「そうだ。自信ないか?」 「腕相撲ってなに?」 「……そこか」  かくかくしじかと、晴直がアトリに腕相撲のルールを説明する。 「てめぇそんなの勝てるわけねーだろ! パステッドが!」  腕相撲の説明をするとそんな返事が帰って来たので、敗北宣言とみなして、晴直はベッド横の床に腰をおろした。  後ろからアトリの足が乱暴に背中を蹴ってくるが、大した痛みではない。  野乃は流しの前、華凜は窓の前に腰を下ろし、ひとまず話し合いをする準備は整った。 「で、どんな活動してるわけ? その――」 「USEね。Under Sky Explorer。私達はその中の『エーファ』ってグループ。活動内容は情報収集ね」 「非合法な?」 「それは状況に寄るけど、必要ならそういうこともするわね」 「現行犯じゃないと逮捕できない程度だよ。これ被ると、カメラは大抵誤魔化せるし」  野乃が顔の前で手を振ると、見覚えのある白い仮面が、ERで現れる。  野乃に続き、アトリが補完を入れる。 「シェルには無数の監視カメラがあるけど、自動認証は生身の顔にしかないんだ。仮面は指名手配されない。生身の警官には、またお前かって思われるけどな」 「ま、正当な手段で集めることだって当然あるわよ? 個人が持ってる情報は事前に連絡してコピーしに行ってるし」 「ちなみに今日のは?」 「あー、アレは企業のデータベースにフリーのアクセスポイントから侵入してね、別に損壊はないはずだけど」 「ふーん。言っとくけど、プログラムの面じゃ、俺は役に立たないからな?」 「大丈夫。その辺は野乃がやってくれるから」 「マジ? お前すごいんだな」 「ふふーん。もっと褒めていいよ? 僕は褒めて伸びるタイプだから」 「今度な。ま、つまり俺は侵入と逃走を手伝えばいいってことか」 「そゆこと♪」  パチンと指を鳴らして華凜が笑う。
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