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「ま、作戦は私が考えるから、小難しいことは考えなくていいわ。とにかく動ける人間が欲しかったのよ。スキットは量産できないし、使える人間が少ないから」
「なるほどな。俺もその変な仮面着けた方がいいのか?」
「もちろん」
華凜がベッドの下に手を入れ、米櫃のような円筒状の箱を引っ張り出す。
蓋を開けると、ブレスレットが二つと、インカムのような耳当てが現れる。
「これがERの発生器ね。装着すると生体認証が入って、装着中は使用者以外のコントロールは受け付けなくなるから気をつけて」
「あと使ったらチャージがいる。結構持つけどな」
「そのERっていうのは自分で作れるのか? いくつか作ってみたい。教えてくれ」
「オーケー。お付き合いしましょう。いい、まずはね――」
晴直に身を寄せて、華凜が発生器の操作を説明してくれる。
野乃はベッドに寝転び、アトリは晴直を足蹴にしながら自分の発生装置をいじりだす。
始めて来た悪い組織のアジトは、思いのほか暖かかった。
くぅ、と腹の鳴る音がして、静かだった部屋の空気が弛緩する。
「腹減ったな。なんか食わないか?」
「そうね。確かストックがあったはず」
立ち上がった華凜が流し台の下を開き、取り出した物を晴直他二人に投げ渡す。
飲むゼリータイプの栄養食品のグレープフルーツ味だった。
「いや、できればもっとちゃんとしたもんが食いたいんだが」
「マスカット味がよかった?」
「そうじゃなくてさ――こう」
「あ」
背後のアトリが声を上げる。
「ひょっとして地上時代って、食いもんが固形物の時代か?」
「あ、そっか」
「え……? ちょっと待て、それってお前等、この味気ない飲み物とも食い物ともつかない栄養食が主食だっていうのか?」
「うん」
「そんな……ばかな……っ!」
現在地が地下であることを知った時以上の衝撃が、晴直の頭にぶつけられる。
「……もう一度冬眠できないか、市役所に聞いてくる」
「待って待って待って!」
腰にしがみ付いて引き留める華凜と、面白半分にしがみつく野乃。
「地上に行けるようになったら起こしてくれ」
「いやいやいやその為に頑張ろうって話だったじゃない!」
「全くないわけじゃないぞ。専用の店にはちゃんとある」
バッと振り返る晴直が、目を輝かせる。
「本当か?」
「あ、ああ。西の方のブロックに、マニア向けの商店がいくつかあるんだ。そこにある」
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