第1章

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「お兄さん、パステッドかい? うちの常連にもう一人いるよ。今度会ってみるかい?」 「お、いいね。相手にも俺のこと話しといてよ。その辺で会えるかもしんねぇし」 「あいよ。ところで――」  三人の視線が、晴直の買いこんだ、大量の荷物へ移る。  米が五キロ、醤油と味噌、出汁の乾物少々に、なべ二つとフライパンが一つ。包丁が一つ。その他諸々大量だ。 「リュックサックを買ってきた。これに入れてくれ。鉄板も入ってるから、背中は大丈夫だ」 「も、持って帰る気かい?」 「当然」  荷物をリュックサックに入れてもらい、晴直は軽々とリュックを背負い、上機嫌で店員に背を向ける。 「いや、いい買い物したぜ」 「兄ちゃん、重くないのそれ?」 「余裕余裕」  野乃と笑いながら店を出ると、店に入ろうとした客とぶつかりそうになり、慌てて横に避けてすれ違った。 「失礼」 「いえ、こちらこそ」  二人がすれ違い、直後、同時に勢いよく振り返り、見覚えのある互いの顔を視界に入れた。 「ハル?」 「……霧、か?」 四章・ReUnion?  アジトに戻った夜、晴直は野乃に語ってくれた。  晴直にも、コールドスリープ前には友人と言うものがいた。  霧も晴直の友人の一人であり、おそらく最も付き合いの長い友人だ。 「なんか気が合ってよくつるんでたんだ。上品で頭が良いいけど男勝りでな、そのくせ変な所で泣き虫で。俺が自衛隊に入るって言ったら、半日延々と泣かれたよ。ま、あの時期の自衛隊は危険な職業だったからな」 「つまり、兄ちゃんの女?」 「さあな。どんな関係だったのか……口にしたことがないから」  記憶の中では長かった髪が、短く切りそろえられてはいたが、間違いなく幼馴染の霧であることを、晴直は相手の反応からも確信した。 「霧……お前、どうして?」 「えっと、自衛官になって、ハルと同じ理由で……コールドスリープ」 「そ、そうか」  二人とも、それきり黙りこくってしまう。  コールドスリープしていた晴直にとって、別れはつい昨日のこと。対する霧は、少なくとも自衛官になるだけの時間があったらしい。つまり感動の再会なわけだ。  二人とも互いの感情に温度差があることを理解しているから、どうしていいのか分からず沈黙が産まれていた。 「どうしたの兄ちゃん――」 「あああああああーーーっ!」
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