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唐突な叫び声に三人が振り向くと、そこに居たのは数時間前華凜達を追い、晴直を勧誘した女性警官だった。
(まずい――)
晴直が対応を考え出すよりも早く、警官が叫ぶ。
「霧さん! その子USEの一人です! その人渡さないで」
かちゃん、と晴直の左手と霧の右手に、手錠が掛かった。
目を見開く晴直が手元へ視線を降ろし、正面へ戻すと、霧がにこりと晴直に笑いかける。
「私、もうハルと離れるの嫌だから」
(……四百年かぁ)
幼馴染がヤンデレになるには十分な時間だよなぁ、としみじみ思う。
見上げた空は、酷く忌々しい青色をしていた。
少しの間を置いて、晴直は空を見上げたまま聞いた。
「……霧。警官になったんだな」
「うん」
「似合ってるよ。金が欲しくて自衛官になった俺より、よっぽど。お前は正義感が強かったから」
「そ、そう、かな?」
「ああ、だから一緒にはいられない。俺は地上に帰りたい」
霧は一瞬ひるんだ後、表情を鬼気迫るものへと変貌させる。
対する晴直は、凶暴そうに口の端を吊りあげて笑った。
「何を言っても手錠は掛かってる!」
「それは――どうかな!」
晴直が重心を前に傾け、爪先に力を入れて後方へ大きく飛びずさる。
「えっ?」
晴直の手首が、手錠もろとも腕からすっぽぬけた。
地面に落ちた手首から映像が剥がれ、中のゴム手袋が露わになる。
「ER!」
「名付けて、ER・びっくりハンド!」
野乃と共に後退し、晴直、野乃と、霧、警官との距離が開く。
「野乃、時間は稼いでやる。早くスキット着けろ」
「分かってる!」
「そっちができるなら、こっちも準備できる」
霧が腕を振り、何かのボタンを押すような動きをする。
(……この音は――)
その数秒後、晴直の耳に、スキットと同じ、機械の起動する高い音が触れた。
(音は複数。一番近いのは――)
ビルとビルを繋ぐ二階の渡り廊下へ目を向ける。
人気のない渡り廊下の手すりの上に、もそりと動く影があった。
蜘蛛だ。金属で作られた四十センチ大の蜘蛛が、二階の手すりにしがみ付いている。
「PMCのスティルスパイダー? なんであんなものが……」
「今じゃ警察のサポートよ。人材が少なくてね」
「どの道、俺にとっては敵か」
重心を落とし、じりじりと下がりながら、周囲を確認する。
蜘蛛型のロボット、スティルスパイダーは、周囲に合計五体。
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