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「無理よ。無人機動かしちゃったし、それにあの子も呼んじゃったし」
「でもまだ来てない――」
ずさっ、と二人の眼前に、何者かが着地する。
歳は十六がそこら。幼さを残す相貌に、金色の髪。美青年だ。着ているのは、特殊部隊を思わせる、プロテクターや、ポケットの多いベスト。袖口から、手首に巻かれた包帯のようなテープが巻かれている。
どこから飛んできたのかは知らないが、青年は身体を起こすと、霧達に向かって敬礼をした。
「お待たせしました! 宍戸小十郎、ただいま参りました!」
「遅い! もう終わった所!」
「はっ! 申し訳ありません!」
「先輩、流石にそれは無茶ですよ」
まあまあ、と警官が霧をなだめ、霧は額に手を当て、小十郎を睨みつつ言葉を続ける。
「USEにパステッドが加入した」
「なるほど。ならば私の好敵手ということですね!」
(相性は悪そうだけどね)
そう思って苦笑しつつも、霧は小十郎に頷き返す。
「そうね。頼りにしてるわよ、リバーシアン」
「はい!」
晴直がアジトへ帰ると、先に帰ってきていた野乃が、晴直を迎えてくれた。
「無事で何よりだねー兄ちゃん。捕まったのかと思ったよ」
「おう。スティルスパイダーが一匹ついてきちまって。壊すのに手間取った」
「これでお前もお尋ねもんだな」
アトリがきししと笑い、晴直は野乃の頭をぽんと叩いて、床に腰を下ろす。
「寝てる間になまったかな。随分と身体が重かったよ」
「そんな荷物背負ってたら当然でしょう」
華凜に鞄を引っ張られ、晴直はようやく自分の背負っている物を思い出す。
「しまった! 忘れてた!」
荷物を置いて、買ってきた食材を冷蔵庫へ仕舞いだす晴直に、華凜は不安げな目を向け、息を吐きながらぐっと身体を伸ばす。
「ボケボケかアンタは……あーあ。こんなんじゃ次の作戦も不安いっぱいね」
「作戦? いつ?」
「明後日」
「場所は」
「地上設立、国立国会図書館」
五章・LibrarianWaking
夜十時。
野乃、華凜、晴直の三人は、アジトとも晴直の眼ざめた病院とも違う区画のビルの、ビアガーデンにまでやってきていた。
当然酒を飲むためではない。というか飲ませてもらえない。
「リンゴジュースを中ジョッキで」
「酒を頼みなさいアンタら」
「じゃあニコラシカ」
「未成年にはお売りできません」
言いながら店員の女性は、ジョッキにリンゴジュースを注いでくれた。
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