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一章・ReBirth
真っ白な箱型の部屋のベッドで、少年が目を覚ます。
少年は何かを確かめるように目の前に手をかざし、小さく頬を緩めて体を起こす。
プツンと音がして、天井のスピーカーから合成された機械的な音声が響く。
『おはようございます瀬名晴直様。貴方の患っていた緋光性神経症は完治しました』
「どうも。今何年? 西暦で」
質問を返しながら、晴直はベッドの横に置かれた着替えに袖を通す。
『西暦2551年です』
「丸四百年か」
シャツを着こんで、ジャケットに袖を通す。
ジャケットは四百年前に愛用していたものと同じ型で、すんなりと肌になじむ。
『時代の違いに関するチュートリアルがあります。利用しますか?』
「書面かデータでくれ。後で見る」
『貴方には親族により残された財産があります。受け取りますか?」
「もちろん」
『貴方には現在の記憶を消し去り、新しい人間として生きる選択肢が用意されています。記憶を消去しますか?』
「必要ない」
『政府からの報告は以上です。情報端末、財布を忘れずにお持ちください』
「あいよ。行くか」
ガラス板のような端末と、財布を手に取り、気合を入れ直し、白いサイコロのような病室から一歩を踏み出した。
病院から踏み出した晴直は空を見上げて、困惑した表情を作る。
立ち並ぶ同じ形のビル。階数は十階ほどはあるだろうか。イメージとしてはショッピングモールの様で、ベランダの様な通路がビル同士を繋いでいる。ビルの商店も通路側から入る構造のようだ。
困惑の原因はというと、ビルの合間から見える空に違和感を覚えたからだ。
しかしうまくその理由を掴めないまま、困惑の表情を整えて晴直は歩き出す。
四百年も寝ていたが、道を歩く人々の服装に大きな変化はなく、ビルとビルの間の道路を走る車は、しっかりとタイヤで走っている。
(四百年もすれば車は宙に浮いてると思ったのに。変わらないもんだな)
少し歩くと、道端に黒い長方体を発見する。長方体は全面がモニターのようで、星空のような映像を流している。好奇心から近寄って触れてみると、飲み物の自動販売機へ表面の映像を変える。
(本当に変わらないな。まあ四百年前でも十分便利だったってこと――)
端末のお財布機能で飲み物を購入し、ペットボトルを取りだしたところでハッとし、蓋にかけようとした手を止める。
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