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晴直の記憶と違い、蓋はコンロのつまみのようなダイヤル状をしていた。
「開け方わかんねぇ! ジェネレーションギャップ!」
「キャップだけにジェネレーションギャップ?」
「お、上手いこと言うな」
どこからともなく聞こえた声に晴直は振り返るが、そこにはいるのは晴直を奇妙な目で見る通行人のみ。
顔を赤くして頬を掻く。
「まあぶっ壊せばいい――っ!」
ボトルの頭に手を賭けた瞬間、キィィンという耳鳴りのような音が鼓膜をつつき、晴直は耳を押さえた。
音のした道路の先に目を向けると、白い模様のない覆面を着けた、赤い髪の女。
「失敬♪」
女はインラインスケートのような靴を履き、地上から数十センチ浮き上がりながら、滑るようにして晴直のすぐ横を走り抜けていく。
さらに女の来た方向には、女と同じように仮面を着け、同じような靴を履いて滑る長髪痩身の小柄な男。
その後ろには、息を切らせた青い服装の女性が膝をついている。晴直の記憶にあるものとはデザインが多少変わっているが、警察の制服だ。
「その人捕まえて! だれか!」
よく分からないが、警察が追っているのだから悪いやつだろう。
晴直はにやりと笑い、肩を回して走る男の進行方向に立ちふさがる。
男が叫ぶ。
「どけよ!」
「やだね」
仮面の下で、男が舌打ちをした気がした。
晴直にぶつかる直前に、男が急ブレーキをかける。
晴直を避けるために方向転換をするつもりだったのだろうが、晴直はその隙を見逃さない。
一歩踏みこみ、右手の掌底を男の鳩尾に叩き込む。
「ぐっ……」
男の軽い身体が後方に吹っ飛んでいき、歩道を転がっていく。
靴で空中に浮いていたとはいえ、あまりに軽々と飛んでいった男の身体に、晴直の背中に冷や汗が吹き出した。
「や、やりすぎ?」
地面でぐったりとする男へ、晴直が歩み寄ろうとする。
そこへ――
「そいつに触るな!」
頭上から降り注いだ声に、晴直が振り返りつつ頭上を仰ぐ。
ビルの上階からだろう。青白い髪の、やはり覆面をした少女が、晴直へ向けてまっすぐに飛び込んでくる。
「おいおいおい!」
慌てて少女を受け止めようとする晴直。
だが少女の身体は、二階の床と同じ高さでバチバチと鳴る網目状の光に引っかかって急停止し、トランポリンの様にポヨンと跳ねかえる。
「ばぁかパステッド! ひっかかったぁ♪」
光る網に引っ掛かりながら、ケラケラ笑う少女。
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