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「すみません、お姉さんが美人だったもんでつい!」
晴直は慌てて両手をあげて体を引くが、晴直が引いた分だけ、婦警は真顔のままぐいっと体を寄せてくる。
「な、なんですか?」
「ひょっとして、パステッドの方ですか?」
「パステッド?」
「知らないんですね! やっぱり!」
婦警が目を輝かせ、晴直の手を取り強く握りしめる。
「な、なに! なんですか! 俺なんかマズイことしました?」
「大丈夫です! 期待どおりです! 今ご説明します!」
「あの、まず手を離して――」
「後で話します! パステッドというのはですね、コールドスリープで眠っていた人を指す言葉なんですよ! コールドスリープが開発された直後には存在しない言葉ですよね!」
Pastは英語で過去の意、だったはずだ。彼の記憶では。
「なるほど。ところで手を」
「後で離します」
感心しながら、もう一度頼むが、にべもなく断られる。
「それでですねパステッドさん。もしよかったら、警察官になりませんか? 正義の味方、こんなにカッコイイ仕事はありませんよ?」
「いやー、俺前に生きてた時代は似たようなことしてたんで、今回は別の方針で行こうかなー、とか思ってるんで」
「そう、ですか……無理強いはダメですよね」
気を落としながら、婦警は晴直の手を開放する。
ほっと息を吐いて、手をぶらぶら振る晴直。
「お姉さん、もう大丈夫そうですね」
「はい。あ、これは失礼。お茶ありがとうございます。あの、お金なんですが、仕事用の端末では支払いができないので、アドレスコードを」
「いや良いですよ。色々教えて貰ったんで。それでは」
爽やかな笑顔を残し、晴直は婦警に見送られながら早足でその場を去っていく。
(アドレスなんて渡したら、勧誘続きそうだしな)
そんなことを思いながら、晴直はフラフラと歩いていった。
町をふらついた晴直は、暫くすると再び自販機で飲み物を買い、利用する者の少ない階段のある横道で一息つくことにした。
階段に腰を下ろし、キャップを開く。
晴直の時代からある有名な炭酸飲料は、四百年前と変わらない味がした。
息を吐いて暫く腰を落ち着けていると、カチカチと高く響く足音が聞こえ、やたらと硬質な靴をはいた誰かが、晴直の隣に腰をおろした。
「ハロー。お隣失礼」
茶髪の女が笑顔で挨拶をしてくる。
「……ハロー」
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