レッスン2

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彼だって社会人だ。 ストレスもあるだろうし、ため息くらい普通に吐くだろう。 けれど、笑顔しか見たことのない彼の切なく漏れたため息に、私は無意識にメガネを外して釘付けになっていた。 いつもキリッと上がっている太眉はタレ目と同じように下がり、丸まった背中は弱々しく、私の胸をざわざわとかき乱した。 それからというもの、彼の姿を見つけると視線で追い、話し声には聞き耳を立てた。 「……まさかお前……今の男が好きなのか?」 再び回想していた私に、前方を歩いていた三木が黒いオーラを背負って(私にはそう見える)迫ってきた。 そうだった。 今、私が考えるべきは三木の告白で、岩さんではなかった。 「あのね、三木――」 「あの男……休憩所でたまに見かけるな。チッ……ユキヤばっかりマークしてて他はノーマークだった」 「あ、あの、三木?」
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