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「相澤、ホレ顔上げろ」
「む~」
「文句垂れんな、お前が出してきた条件だろ」
薄暗い一室での会話。
周りにボールやらネット、マットなどがあるここは体育倉庫のようだった。
「別に違う条件だって、俺は良いんだぜ」
「えっ?ホント??」
体育倉庫からは二人の会話が聞こえる。
一人はバレーボールのポールに寄りかかり、見るからに身長の高そうな男。
バスケットに携わっているのか話しながらもしきりにバスケットボールを触っている。
もう一人は跳び箱の上に上っているせいで、はっきりとした身長は分からないが、ポールに寄り掛かっている男よりは15㎝は小さいであろう男だった。
小柄な男は跳び箱から飛び降りると、『ホントにホント?』ともう一人の男に尋ねている。
「あぁ。ホント。まぁ俺は一度言った事は撤回しない主義だけど相澤は違うって事だろ?」
小柄な男を相澤と呼び、ニヤリと笑いながらもう一人の男はそう言った。
その言葉に反応したのは相澤と呼ばれた男で、ハッと何かに気づくと再度跳び箱の上に上るとバスケ部の男を睨む。
「ふん、俺だって一度言った事は撤回するような男じゃないんだよ。そんな女々しい事しないの!ホレさっさとやれよ」
そう言ってもう一人の男に顔を向け目を閉じる。
すると男は触っていたボールをボール入れに戻し、相澤へ近づいた。
そして相澤の顎を掴み、自分の顔との距離をゼロにする。
「んっ」
相澤が吐息を漏らしたのを確認し、更に口付けを深いものへと変える。
「ぁ、んっ、……っおぃ!」
男の手が相澤の胸を弄った動きをすると、相澤は焦ったように男の胸を叩き距離を取る。
「悪ぃ、つい」
「ついじゃねぇよ!俺は男だ!そう言うのは女にやれ!くそ八戸」
八戸と呼ばれた男は『ハイハイ』と手を上げ、相澤から距離を取ると体育倉庫の扉に手をかける。
「あっ!ちょっと待てよ!」
自分を置いて出て行こうとする八戸を追いかけるように、相澤も慌てて後を追うのだった。
時は二週間前に遡る。
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