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何か女が言っていたようだが、構わずに通話を切った。
自分に密着してきていた相澤の手を取ると、早足に自宅へ足を向ける。
自分の腕を力強く握る八戸に、八戸の興味が電話口の女から自分に戻ってきた事を感じ取ると相澤は素直に八戸の後を追った。
だが身長の差…足の長さの差が悲しい。
八戸に半ば引きずられるように歩く相澤に、いつも余裕を見せている八戸は気づいていないようだった。
八戸よりも確実に相澤の方が歩数は多そうだったが、いつも持っている余裕を取り払うことが出来て何故だか嬉しく感じてしまうのだった。
「なぁなぁ、俺ちゃんと出来てた?」
「は?」
「だ~か~ら、俺八戸が教えてくれたとおりにやったんだけどちゃんと出来てた?」
テストの採点を待つ子供のように、頬を赤らめ八戸を伺っている。
「……何?誘ってきたわけじゃないの?」
「誘う?何が?」
その時になって八戸は自分が勘違いをしていた事に気づき、小さく溜息を吐く。
確かに自分が相澤に教えた内容だったが、自分に返って来るとこうも効果覿面なのかと多少悲しくもなった。
「とりあえず俺の家で良いか?」
「うん、そこで俺の話しちゃんと聞いてね」
「はいはい」
幾分か余裕を取り戻し、歩くスピードを緩める。
後数分歩けば着く我家で一体何を話されるのか八戸は頭を悩ませるのだった。
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