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「で、土曜の惚気電話は何?」
朝教室に着くや否や地を這うような低い声で木場が問いかける。
こんな低い声も出せるのかと少し関心したが、どうやら機嫌が良くない様で顔は笑顔を作っているが声音はその表情とはかけ離れたいた。
「……木場?何怒ってるんだ?俺は景山に電話したが、木場にはかけてないはずだけど……惚気電話とは?」
「そりゃねー。俺自身にはかかってきてないよ。でもちあが俺と一緒に居るの知ってて、なんでかけて来るんだよ。しかもああ言う内容の事を!」
自分がとったあの行動が、なぜ目の前の友人の逆鱗に触れてしまったのか理由が八戸には分からなかった。
八戸が気づく様子が無いのを感じ取ると、木場は溜息を吐き既に自分の席に着席している景山に視線を向ける。
「ちあの気持ちは知ってるよ。でもちあは俺に答えを求めていない。俺を自由にしてくれてる。まだな。……多分ちあだってお前たちがくっついて嬉しいと思う。自分だって幸せになりたいと思ってるはずなんだ。皐月の幸せな話を聞いて、自分もなりたいと思ったんだろうな。ってなわけで昨日はちあの無言の重圧が酷く苦しかった……」
「……そうか、何か悪い事しちまったな」
「まぁまぁ、八戸もあんまり気にすんなって。木場ももっとドンと構えろ。トモの忍耐強さは超一流だからまだ大丈夫だって」
いつのまに登校してきていたのか、眼鏡を押し上げながら会話に入ってきたのは久野だった。
「まぁ、何はさておき八戸おめでとさん」
ズボンのポケットの中から飴玉を取り出すと八戸へ差し出す。
木場が無言で手のひらを差し出すが、久野は両手を上げるジェスチャーをしてもうない事を伝える。
チッと舌打ちを打ちながら木場は自分の席に戻っていった。
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