籠絡編

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今日も今日とて男子のみで暑苦しく体育の授業を受けていた2-Eの面々は、各々が好きな事をして体を動かしていた。 バスケットコート周辺に集まっているのは5人で、1on1などをして遊んでいた。 「俺はさ、常々八戸が恵まれている存在だと思うんだよ」 コートの外でコートの中を睨みつけながら、長い前髪をピンで止め大きな目を露にした相澤悠が愚痴を零した。 「恵まれてるねぇ~、まぁ身長もでかいし、バスケも上手い、女にはモテるし、料理もできると来た。あぁほんとだ恵まれてんな」 相澤の言葉に賛同したのは狐目に眼鏡をかけた久野陽巳であった。 二人は今コートの中で行われている試合を見ている。 コートの中で戦っているのはバスケ部部長でもある木場亮輔と、副部長である八戸皐月であった。 試合は2ゴール差で八戸がリードしていた。 「木場相手に勝ってるって所がスゲェよな。俺ならダブルスコアくらい差がつけられてるって。アイツあんなでも部長なのにな」 「確かに、亮ちんは俺よりも小さい体してんのに2mの大男にも負けないようなスクリーン決めて来る時もあれば、凄まじいドリブルで抜いて点入れちゃうし。尊敬するよ」 そうコートの中で対峙している二人の身長差はおよそ30cmはありそうであった。 だがその身長差を物ともせず木場は果敢にも攻め込み、八戸も負けじとブロックする。 「あっ、時間だ。亮ち~ん、八戸~、お~わ~り~」 相澤が手を振り中の二人にゲームの終了を伝える。 二人にもその声が届いたようで、『チッ』と言う木場の舌打ちが聞こえた。 「お疲れ、八戸が逃げ切ったみたいだな」 ニヤニヤ顔で木場に告げた久野は、負けて機嫌が悪い木場に頭を殴られていた。 「るっせぇ。皐月はデカイ割にすばやいんだよ。しかも3Pシューターだ。ゴールの数は俺のほうが勝ってたのに」 木場は負けたことが余程悔しいのか、床に置いてあったタオルを取り頭から被る。 「のど渇いた。飲物買ってくる。ちあ!」 そう言って少しはなれた所でバスケットボールを使い、筋トレをしていた景山智明を呼ぶと先に体育館を出て行った。 景山は木場に呼ばれると、それまで勤しんでいた筋トレをすぐに止め、慌てて後を追いかける。 その様子を眺めていた三人の前で足を止めると、 「お前らは?」 と尋ねてきた。
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