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「そうだな。でも、私は信じているのだよ。1万回失敗しても1万1回目に成功をすればいいんだと。そして人はそれが実現できると。諦めなければ成功するのだから」 「諦めないということがどれだけ難しいことか分からないのか?」 「ただ、やめなければいいことだろ」 「それができないのさ。1万分の1しか成功しないのなら人はそれに挑戦なんかしないんだ」 「1万回に1回しか起きない確率はその1回目に起きるし、奇跡っていうのは世界に満ち溢れているんだ。ただ、それに皆が気が付いていないだけだ。目をそらしているだけだ」 「簡単に起きないから奇跡っていうんだろ。漫画の世界じゃないんだ」 「ははは。笑わせてくれる。それこそ漫画じゃないんだ。奇跡っていうのは努力が実を結ぶことを言うんだ。努力をせずに願いが叶うのはご都合主義だ。でも努力したことに結果が付いてくるのは当然のことで、漫画の世界ではそれを奇跡と呼ぶんだ」 「極論だ。なら、宝くじに当たるっていうのはご都合主義じゃないのか」 「それこそ愚問だな。宝くじだって頑張れば当たるのだから。心配するな。悲観するな。人生には奇跡が満ち溢れていて、運命的なのだからな」 言って、沙紀が振り返る。ざぁっと強い風が背中まで伸びた髪と桜の花びらを揺らす。風に舞った花弁が沙紀を際立たせるように世界に散る。
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