30人が本棚に入れています
本棚に追加
高校の時にオレの名前を聞き間違えたバカと再会したのは、持病が悪化して検査に来た時だった。
オレはいくつかの検査室をはしごするために廊下を歩いていた。
あいつは結構大きなケガをして、最初に入院してたどこかの病院から移動してきたとかで、ストレッチャーに乗せられてた。
受付なんかがある病院の表玄関からかなり離れた、検査病棟の廊下なんてところで、
「チョコ先輩だあああああ!」
って、ドップラー効果でもかかりそうな感じでオレを呼びながら運ばれていくあいつを見て、目が点になった。
だってほら、病院で誰かに会うなんて、思いもしてなかったし。
しかも『チヨ』と呼ばれるならまだしも、『チョコ』の方で呼ばれるとは予想外にもほどがあるって感じで。
にぎやかでバカで憎めない後輩が、入院中にいったいどうやったのか手を尽くしたらしく、「見舞いに行ってやって」とあちこちから声がかかった。
昔から憎からず思っていた。
じゃなきゃこんなふざけたあだ名、許すわけない。
そりゃあ、まだ若いですから、お互いにここに至るまでいろいろと紆余曲折はあった。
向こうのいろいろは漏れ聞いているし、オレだってせんぱいのことがあったりまあ、ほらその、いろいろとあった。
だけど、見舞いに来るくらいは来てやろうって、思えるくらいには嫌じゃなかった。
そのケガでベッドから動けなくなってる男から口説かれることになるなんて、ホントに考えてもなかったけど。
最初のコメントを投稿しよう!