30人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわあ、運命感じる。俺、根性で治すわ。先輩とのデートが待ってるからな!」
「はあ?」
「デートしようよ、デート。俺が退院したら、デートしましょうね」
「ああ、そう……何すんの」
「何がいいかなあ……あ、先輩、したことなくてしてみたいこととか、ある?」
「……バンジージャンプ、とか?」
「いきなり、ハードル高っ! いいですよ、じゃあ、先輩も体調万全にしてくださいね」
「え、オレも?」
「してみたいことって、いったじゃん」
「じゃあ、遠慮する」
「なんで! でも、デートはしてくださいね! 今、俺の心の支えですからね!」
「大げさ……」
バカみたいな会話。
くだらなくて中身がないと思ってたけど、ないと寂しくて、ついうっかり見舞いに日参してしまった。
かわいいと思ったんだ。
そんな風に、「なんかいいかも」と思っていた相手からの行動が、オレの背中を押したのは確か。
今まで逃げ回っていた手術に同意してしまった。
だってそう望まれてしまった。
先輩がこいつから手を回したのかもしれない、って気がついたのは手術を受ける麻酔中だったけど、それでもまあいいかくらいは思ってしまった。
そんな相手だからさ。
外出許可とれるって聞いたら、望みをかなえてやりたくなるじゃん。
折しも世の中バレンタインだったわけで。
憎からず思っていて口説かれてても、踏み込んで告ったわけじゃなくて、あやふやなままの関係だったもんだから尚更に、いい機会だって思ってしまったわけだよ。
最初のコメントを投稿しよう!