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「そんでさあ、佐藤くん。かいがいしいのはいいけど、君もケガ人だよ~」
ピリリとテープを切る音と点滴の外された感じがして、ふ、と目が覚めた。
いつの間にかやってきた看護師がてきぱきと処置をしている。
「だって、まだ、チョコ先輩と話してないんですよ、今日」
「そうはいっても、やっと歩行器から松葉杖になったとこでしょ? 無理したら逆戻りよ? そろそろ戻って横になりなさいね」
「ええええええ」
「……佐藤?」
ぼんやりした視界に、ここ数日目に入っていた持ち運びゲージみたいな歩行器がない。
でも声はする。
オレの右手を優しく握っている手は間違いなくバカな後輩、佐藤の手だ。
点滴の間、また転寝していたらしい。
寝入りばなに指をマッサージしてくれていたのは、夢じゃなかったんだ。
「先輩、起きた? 点滴終わったから、外してもらったよ」
「あとで検温にくるけど、佐藤くんはそれまでにお部屋に戻ってくださいね」
「はーい」
返事だけはいいこの返事をして、佐藤が看護師を見送る。
ホントに、いつの間にか人に好かれてる得な性質してるよなって思う。
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