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「まあ、それはさておき」
「俺の気持ち、さておかないでくださいよ」
「おくだろ、普通。そんでよ、枕もとの紙袋、とって」
「これ?」
「そう。やるからもってけ」
ベッドサイドの椅子からも手を伸ばせば届くところに、今日買ってきたものを置いておいた。
コイツが食いたいといった、チョコレート。
手に取って中を確認したバカが、何とも情けない顔をした。
「……先輩、これもってけって……あの」
「お前が食いたいっていったんだろ」
「でも、今日、バレンタインデイじゃないですか。こんなんもらったら……」
「迷惑ならおいてっていい」
コイツの好意がオレの勘違いだったのかって。
さっきは先輩に巻き込んでもいいんじゃね、なんていってもらったけど、やっぱ駄目だったんじゃん。
反応を見てそう思った。
うん、なら置いて行ってくれたらいい。
見ていられなくていたたまれなくなって、よっこいせと体を起こして、紙袋を取り返そうと手を伸ばす。
「迷惑なわけないでしょ!」
病室だっていうのに、でかい声。
びっくりしてその顔を見たら、いい年した男が、涙目になってた。
って、えええええ?
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