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せわしないなと思う。
でもこういう人だとも、知ってる。
せわしないけれど優しくて、忙しくて、気になることはその場で解消してしまいたい人なんだ。
ああ、いやってほど、よく知っている。
「チヨ?」
千代田 洸、という名前からついたあだ名を、今ここでも、当たり前のように呼ぶ。
自分のことは「先生」と呼ばせようとするくせに。
「今、目が覚めた。頭痛い。昼間は調子よくて買い物いってた。ちゃんと脱ぎ着できる服で行った。張り切ってない。普通」
答えながら手渡された体温計をわきの下に挟む。
それから心音と脈拍と血圧と、瞼裏の色や肌の張りを確認される。
先輩の手は優しい。
でもあの頃のような熱はない。
記憶の中にあるのよりも、少しかさついた手。
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