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荷物
死神の御者が骨の馬に鞭を打つ地獄の馬車に乗せられて、ぐつぐつと煮えたぎった地獄の釜に連れて行かれる悪夢から目を覚ますと、むっとした熱気のこもった、まっ暗な部屋の中にいた。
……ああ、またか。
僕の名前は天人(タカト)。生まれてからもうすぐ十歳になる今日まで、ずっと「ナルコレプシー」。日本語では「居眠り病」っていう、どこか間の抜けた名前のついた病気を抱えている。
普通に生活しているなかで、突然、どうあがいても抵抗できないほどの眠気が訪れて、授業中だろうが道端だろうが、すうすうと眠りこけてしまうのが、僕の症状。
授業は聞きたくても聞けないから勉強は遅れるし、「あいつばっかり居眠りを許されるなんてズルイ」と、クラスメイトにはイジ(メ)られるし、低学年の頃からだからもう慣れたけど、はっきり言って最悪だ。
床から伝わるこの音は、エンジンの音だろう。また変なところで眠ってしまった僕をお母さんが迎えに来て、後部座席に乗せられた状態で、目を覚ましたのだろう。
……でも、それにしては、やけに暗い。
徐々に暗闇に目が慣れてくる。ここは車のトランク? どうして僕は、こんなところに放り込まれたのだろう……?
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