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とある地方の山奥の更に奥━━━
行き止まりの林道に車を停めた。
着ていたスーツを脱いでザックに押し込む。
ピカピカの革靴と靴下も同様だ。
来る時に脱いだ服を着る。
着替えを終えると車を藪に隠した。
深い谷に架かった粗末な吊り橋を渡って2時間ほど歩くとおれの故郷の村がある。
通い慣れた獣道を往く。
その早さは他の地域の山間部に住む人でさえ付いてはこられないだろう。
でもおれは呼吸を乱すこともなく、鼻唄を歌いながら登って行った。
生い茂る木々からの木漏れ陽が所々に光の池を作り幻想的な風景を醸し出す。
鹿やウサギが顔を出した。
おれは笑って彼らの声に耳を澄ます。
どうやら志願したいらしい。
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