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「次回はタイホです。つまりあなたは、健康健脚法第36条違反、通称サブロク違反により、検挙されるのです。つまり、牢屋に入るのです。よろしいですね?」
「はあ・・・。もう、嫌だあ・・・」
儂は溜息をついた。
隊員は勝ち誇った笑いを浮かべると、鼻眼鏡のズレを直して、行ってしまった。
2
家に戻り、テレビをつけると桜の満開予想をやっていた。
儂の町の満開はあと数日後だった。今度の土曜日か日曜日が最高の見頃になるということだ。
ケータイの着信メールが鳴った。
日曜日にドングリ公園で花見をやるから、料理の準備をしておけと。友人からだった。10人くらい集まるらしい。早速、了解の返信をした。
さて、困った。
儂は、スニーカーを履いてまで花見には行きたくない。
下駄をつっかけて、闊歩する方が儂にあっている。ようは、あのパトロール隊員の眼を欺けばいいのだ。この町のパトロール隊はふたりしかいない。そもそも犯罪の取り締まり官ではないので、スニーカー取締局はこの町の規模なら、ふたりで充分であると判断したに違いない。
インターネットを立ち上げ、しばらく思案した。
悩みごと相談。
宴を楽しみたい。スニーカーを履かずに、桜満開の下を歩きたい。
画面をいじっているいるうちに、<秘密の悩み受け付けます>のタグが目に飛び込んだ。
秘密探偵アルパカ局をクリック。
白いアルパカが舌をだして草を食んでいる画像と所在地と電話番号が出た。仕事内容、メンバー紹介といった項目はいっさいない。
口コミサイトはあった。
それによれば、ギャングの街を掃除したとか猫の冤罪を晴らしたとかある。
よくわからないが、腕は確からしい。
儂は、早速、電話をした。
「お電話ありがとうございます。こちらは、困りごと、失踪人調査、素行調査専門のアルパカ探偵局です」
はきはきした若い女性の声がした。女の子とまともに話すのは久しぶりなので、少しどきどきしたが、大物ぶって用件を切り出した。
「もしもし。君は、健康健脚法を知っとるかな」
「はい、存じております。お客様は、スニーカーのご相談ですか」
電話口の向こうの女の子は、儂の依頼内容をすぐに見抜いた様子だった。
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