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「ああ」
「わかりました。お急ぎですね。手を打ちましょう」
零門は立ち上がった。
「契約されますか」
「もちろんだとも。しかし本当に大丈夫なのか」
「厄介な仕事ですが、勝算のない仕事は引き受けないので」
零門は笑った。
儂は契約書にサインをして、所定の手付金を支払った。
三日後に、儂のアパートへ報告書を送付するという。
たった三日で?と聞き返すと、失敗したら料金を倍にして返金するという。なんとも、頼もしいお言葉だが、今となっては信用するしかなかった。
3
三日後。
大判の書留便が届いた。差出人はアルパカ写真館。
守秘義務とやらで、探偵事務所とは記されていない。
逸る気持ちを抑えて、封を切った。
A4サイズの紙が2枚。
報告書
調査対象者 スニーカーパトロール隊員 2名
対象者氏名 丸山 冬二 27歳 趣味 眼鏡
北川 朔太郎 29歳 趣味 チョコレート
おもな巡回地区 ドングリ公園、ドングリ川沿いの遊歩道
2名とも袖の下を好む。記録消去の実績あり。金銭の困窮なし。
趣味の眼鏡とチョコレートに着目されたし。
「奇妙な店」という名前の店に連絡を。 以上
2枚目の紙には、「奇妙な店」の住所と電話番号が印されていた。
それだけだった。
どういう事だ?
あのペテン師め!儂にどうしろというのだ?
儂は冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プルタブを抜いた。半分ほど飲み干すと頭がすっきりしてきた。
「奇妙な店」へ行けということなのか。
店の住所はかなり遠かった。クルマで高速を飛ばしても、四時間はかかりそうだ。儂は天井を見上げ、ビールを啜り、溜息をもらした。
ケータイで「奇妙な店」の電話番号を押す。
「もしもし。儂は、アルパカ探偵からそちらの店を紹介された、山田という者ですが・・・」
「はいはい、山田さんですね。レイモン様からお話を聞いております」
若そうな男の声がした。
「山田さんの気に入る品物を用意いたしました」
「ほう。どんなモノかね、それは」
「電話では言えません。盗聴されているかもしれないので」
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