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「おや、どうかしましたか」
「・・・やっぱりいいです」
女子高生は小瓶を店主に返すと、チョコレートを丁寧に包装し始めた。
「私、ここで話してて気づいたんです。惚れ薬なんかに頼らず、この想いを素直に伝えることが重要なんだって」
店主は何も言わず、その小瓶をポケットの中へ入れる。
「だから・・・ありがとうございました」
そして彼女はぺこりと頭を下げると、そそくさと店から出て行ってしまった。
横目で店主を見ると、いつも以上に胡散臭そうな笑顔を浮かべていた。
「アルバイトくん。この小瓶を処分しておいてくれたまえ」
「いいんですか、惚れ薬なんでしょう」
「そんなもの、この店では取り扱ってないよ」
小瓶の中身はなんだったのか。少し気になって匂いを嗅いでみたが、仄かにアルコールのような香りが鼻を突くだけで、最後まで中身はわからず仕舞いだった。
ここは路地裏にある店、裸の王様。取り扱う商品は、美術品と骨董品と、目に見えない特別なもの。
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