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 黒い大地は一面白く染まっている。丸太で作られた質素な家や側に生える木々も、うっすらと白く染まっている。一日のほとんどが夜の闇に包まれ、陽射しは時おり射し込むくらいしかない。そんな環境だから、外気は体が固まるほどに寒い。  オレがこんな過酷な土地に来たのは、つい昨日のこと。それ以前は、こことは真逆の陽射しがよく照りつける暑い土地にいた。そこは多少湿度は高かったが、別に嫌な環境ではなかった。鳥や獣の声が賑やかに聞こえ、働く人々の姿も多くあり、決してつまらないような土地ではなかった。  だが、ここにはそれがない。慣れない環境なうえ、人の姿も少なく耳を潤す声も聞こえてこない。以前いた土地の賑やかさが恋しくなり、来て早々だが辛く感じている。  ただ……一つ疑問なのが、オレがこの土地に来た理由だ。  オレは自分の意思でこの土地に来たわけではない。だから、ここが何処でどんな場所なのかも知らないのだ。  周囲を見渡しても見えるのは白い世界。家は一軒だけで、木も数本生えているだけで閑散としている。気温同様に見える景色も寒々しい。そして、人の姿といえば、道を挟んで向こう側にいる一人の女性と、彼女に寄りそうミルク色の犬が一匹だけ。本当に寂しい場所だ。
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