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他に人がいないかと探してみるが見当たるはずもなく、取り敢えずここが何処なのか彼女に尋ねてみることにした。
「あのっ! すみません」
突然の呼び掛けに驚いたのか、道の向こうにいる女性はビクリと体を震わした。そして、妙に怯えた素振りでこちらの方に視線を向けてきた。
「……なんですか?」
女性はひどく小さな声で返事をかえしてきた。声の小ささにも驚いたが、オレは彼女の仕草が気になってしまった。女性は一度合ったオレとの視線をすぐに逸らすと、キョロキョロと忙しなく周囲に巡らせた。しばらく周囲を確認し、何もなかったのか安堵したように息を洩らすと、ようやくオレへと視線を返してきた。
「すみません、ここって何処なんですか?」
彼女の態度が気になりながらも、その警戒心に感化され、自分の声も気持ち小さくなってしまう。すると、彼女はひどく驚き声をあげた。
「貴方も、ここが何処か知らないんですか?」
「はい。気がついたら、ここに立ってたんで……」
そう言うと、彼女は再び視線を彷徨わせた。
「……実は、私もよく知らなくて。ただ、ここに運ばれる前にチラリと見たんですけど、ここ高い崖の上みたいなんです」
「崖の上ですか?」
「はい。垂直な崖の側面にいくつか断層のようなものも見えました」
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