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 でも、オレがそんな反応をしてしまうのも仕方ないだろう。彼女の言う話は突飛すぎる。生き物をチョコレートに変えて食べる魔女だなんて……。魔女という存在でさえ怪しいのに、チョコレートに変えるだなんて……。そう簡単に信じられる内容ではない。  けど、それを信じる彼女をおかしく思いながらも、この地が“生贄の地”だと言われると、それはあながち間違ってはいないのではと思える何かもある。  ここは本当に何もない、人もいない。そして、オレたちは誰かの意思でここに連れてこられた。本当に高い崖の上だとするならば、逃げ場なんてない。それこそ生贄用の祭壇とも言える。  なおも何かに怯える彼女を見ながら、もしかしたら魔女の話も本当なのかと思えてしまう。  ――ガタン。そんなことを考えていると、突如大きな音が響き、微かな光が射し込んできた。僅かに訪れる昼の日差しかと思っていると、今度は地面が大きく揺れた。 「また地震かっ」 「魔女よっ!」  昨日、オレが目を覚ます原因となった大きな揺れ。横揺れ縦揺れが合わさった酔いそうな揺れに身を構えるオレとは逆に、彼女は震えながらに叫ぶ。  なかなかおさまらない揺れに、体が揺さぶられ、頭がぐわんぐわんとしてくる。そんな状態に彼女の甲高い声が癪に障る。この女、本当におかしなヤツなのかと恨めしく睨んだ瞬間、オレの耳に聞こえないはずの声が届いた。
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