1人が本棚に入れています
本棚に追加
『ウフフ。楽しみねー』
遠くからだが、はっきりと聞こえた女の声。
それはとても弾んだ声で、これからの何かを心待にする声だった。
「魔女よ。魔女がきたんだわっ!!」
道の向こうにいる彼女が震えながら叫ぶ。
『チョコレートッ♪ チョコレートッ♪』
先程とは違う幼い少女の声。少女は歌うように『チョコレート』という言葉を繰り返している。そして、道の向こうに彼女も魔女の声に合わせるように叫び続ける。
「人喰いの魔女……? 本当にいるのか。……オレたちは本当に生贄なのか」
おさまることのない揺れの中、近づいてくる魔女の声。
彼女の言うことは間違っていなかった。本当のことだったんだ……。それを自分の耳をもって実感していると、あれほど地面を揺らしていた揺れが前触れもなく止まった。
戻ってきた平穏に安堵するが、それもつかの間のこと。薄暗い外の向こうからは、未だに魔女たちの嬉々とした声が聞こえてくるのだから。さらにおかしなことに、体がカチカチに固まるほどに寒かった外気までが、僅かながら暖かくなったようにも感じるのだ。
次々と襲い来る異変に恐怖していると、再び地が大きく横に揺れ、辺りが眩い光に包まれた。
最初のコメントを投稿しよう!