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『ウフフ。楽しみねー』  遠くからだが、はっきりと聞こえた女の声。  それはとても弾んだ声で、これからの何かを心待にする声だった。 「魔女よ。魔女がきたんだわっ!!」  道の向こうにいる彼女が震えながら叫ぶ。 『チョコレートッ♪ チョコレートッ♪』  先程とは違う幼い少女の声。少女は歌うように『チョコレート』という言葉を繰り返している。そして、道の向こうに彼女も魔女の声に合わせるように叫び続ける。 「人喰いの魔女……? 本当にいるのか。……オレたちは本当に生贄なのか」  おさまることのない揺れの中、近づいてくる魔女の声。  彼女の言うことは間違っていなかった。本当のことだったんだ……。それを自分の耳をもって実感していると、あれほど地面を揺らしていた揺れが前触れもなく止まった。  戻ってきた平穏に安堵するが、それもつかの間のこと。薄暗い外の向こうからは、未だに魔女たちの嬉々とした声が聞こえてくるのだから。さらにおかしなことに、体がカチカチに固まるほどに寒かった外気までが、僅かながら暖かくなったようにも感じるのだ。  次々と襲い来る異変に恐怖していると、再び地が大きく横に揺れ、辺りが眩い光に包まれた。
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