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視界が眩い光に覆われ、外気がいっそう暖かさを増す。
『チョコレートだぁ』
二度目の揺れもおさまったが、魔女の声はさっきよりもずっと近くに聞こえるようになった。
この地に何が起こっているのか想像もつかず、思考も追い付かない。だが、確実に現状に恐怖している。外気は暖かくなったはずなのに、体は変わらず固まったままだ。それこそ、本当にチョコレートになったみたいにだ。そして、あれほど煩かった彼女も叫ぶのを止め、固まった表情で上空に視線だけを向けていた。
『おいしそ~』
上空から聞こえてくる魔女の声に、オレも視線を上向かせた。
「――――!!」
上空に浮かぶ二つの笑顔。それは母と子のようで、いっけん微笑ましく映る。しかし、それはとても巨大で一目で人外の存在だと認識できる。
――人喰いの魔女!
声も出せずに上空に浮かぶ顔を見ていると、今度はズッと手が伸びてきた。
『わぁ、チョコレートのお人形さんだぁ』
オレの背丈と変わらない大きさの指が、道の向こうにいる彼女の体を摘まむ。彼女は心の底から恐怖し、叫び声すらあげられず抵抗もできない。そして、無抵抗の体はいとも簡単に浮かび上がり、はるか上空へと消えていってしまった。
『かわいー』
『こら、お行儀が悪いわよ』
『はーい、ごめんなさい。……あ』
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