桜色チョーカー

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 1週間後、店員のレナさんから連絡が入った。  注文していた『桜色チョーカー』が入荷したということだ。 「わかりました。それでは、今日、会社の帰りに行きます」と僕は答えた。  そして、会社の帰りに渋谷のそのお店に顔を出すと、店員のレナさんが一人、店番をしていた。 「あの・・・、この間注文しておいた」と僕が店先で声を掛けると、彼女は少し驚いた表情を見せてから、「あっ、こないだの。すみません。この時間、お客さんが少ないものですからびっくりしちゃって」とさっき見せた表情の訳を聞かせてくれた。 「そんな・・・。こちらこそ驚かせたみたいで・・・」と、僕は彼女に恐縮していた。  彼女が店の奥から持ってきたケースの中に、注文しておいた『桜色チョーカー』が大切に保管されている。 「ご注文された商品はこちらで宜しいですか?」とレナさんは確認をしてきたので、僕は「はい」とだけ答えた。 「この桜色チョーカーに目をつけるとは、お客様の彼女さんもお目が高いですね」 「えっ、そうなんですか?」と僕は聞いた。 「実は、この商品は私の美術専門学校に通っている友達が製作した物なんです。この色はなかなか今は売れなくて・・・」 「えっ、でも。これからじゃないですか?春の桜のシーズンになれば」と僕がいうと、彼女は素敵な笑顔を見せながら「そうですね」と答えてくれた。
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