第1章

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目を見開いて固まっている私を見て、男がすまなそうに話し出す。 「あの、驚かれるのも無理ないと思います。最初、玄関からお邪魔しようと思ったんですけど、多分入れてもらえないだろうなって」 もちろんです。入れるわけないだろ。 「それで、仕方なく窓から失礼する形になったんですけど……お願いなので110番しようとするのやめてもらえませんか! 僕、不審な者ではないです!」 男はそう言って、私が携帯に伸ばしている手をおさえた。 「……不審者が自分のこと不審ですって言うわけなくないですか」 「イヤホントその通りなんですけど! お願いです、話を聞いてください!」 私はしぶしぶ携帯に伸ばしていた手を下ろした。 不審者なんだからもっと怖がっていいはずなのに、この男はなんか人懐こくってほのぼのした雰囲気で、全然怖くない。 怖くないどころか、話ぐらい聞いてやるかって気持ちになってる。自分の冷静さが逆に怖いわ。
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