プロローグ

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なんてふつーの人間なんでしょう、私は。 ちっちゃい頃、自分は他のやつらとは多分どこかが違うと純粋に信じ切り、自分が活躍する妄想を果てしなく膨らませてた。 でも、途中で気づいた。勉強が出来るわけでもなく、運動神経がいいわけでもない。美人なわけでもないし、他の人より秀でた才能があるわけでもない。私はものすごく普通だ、って。 一定の時期に来た思春期。 自分の変わってく体への嫌悪感。 ちょっとのことで揺さぶられる異性への興味。 なんか嫌だなーっていう漠然としつつも強烈な親への反抗期。 保健体育の教科書に書かれてるそのまんま。 ほんっとの、ほんとのほんとの一部を除いて、人間はひどいくらい平等にみんな普通だ。 普通が何を指すかって? それはうーん、なんとなく分かるでしょ? そんなふつーの私の瞳に映る世界は、大してキラキラしてるわけでも、かといってすっごくドロドロしてるわけでもなく、ふつーの世界。当たり前です。 進路のことで親と喧嘩したり、友達と放課後ずっとしゃべったり、スカート丈を巡って学校の先生と戦いを繰り広げたり、私は普通の中学生ライフを謳歌していた。それで別に不満もなかった。 けれど、彼が……彼の存在が、限りなく普通の私の世界に、少しのきらめきを添えてくれていた。 彼といるだけで、心臓の鼓動が速くなって、緊張するんだけどずっと一緒にいたくて、すごく幸せな気持ちになって……うん、まあこんな感じだったの。 彼とは二年付き合っていた。 なんでこんないい人が私とってくらいに、彼は格好良くて気さくで優しい人だった。普通の私にはもったいないほどに。
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