第1章

2/45
前へ
/289ページ
次へ
本当、なんにも変わらないんだなって思いますよ。 私は、小さくため息をついた。 稜介の死から、まだ1ヶ月しか経っていない。 でも、教室は稜介が死ぬ前の空気を取り戻しつつある。 1ヶ月経ってしまえば、みんな忘れたわけじゃないけど、稜介がいないことに順応し始める。 ああ無情、って感じだわ。 まぁこんなこと言ってる私も、彼がいないことに慣れてきてるふりをしてるんだけど。 人ひとり死んでも、世の中って普通に流れていくもんなんだよね。知ってたけど、実際に経験するとやっぱりなんかやるせない。 「ねぇ、まりあ」 物思いにふけっていると、友達が話しかけてきた。 「んー?」 「言いにくいんだけどね。……矢口死んじゃってからまだそんなに経ってないのに、いなかったらいないなりにみんな日常を取り戻していくんだね。なんか寂しいな……」 「あー……。分かる。私も今、里紗と同じこと考えてた」 「あ、そうなんだ」
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加