第1章

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彼……矢口稜介は、本当に格好良い人だった。 成績優秀で、運動もなんでも出来て、でも全然嫌味じゃなくて、男女問わず友達がいっぱい。そんな人、学年に絶対一人はいません? 稜介は、まさにそんな人だった。 私が彼と仲良くなったきっかけは、中学校の入学式。 “矢口稜介”と“安堂まりあ”は、あいうえお順で、ちょうど隣の席だった。 校長先生の話を聞きながら、友達できるかな、自己紹介って何言えばいいんだろう、部活どうしよう……とか、いろいろ考えて、私はすごく緊張していた。 小さく息をついてふと左を見ると、左隣の男子は校歌がプリントされた紙を折って、紙飛行機を作っていた。 「……は?」 あわてて口をおさえる。驚きのあまり、声が出てしまった。 入学式中に何考えてんのコイツ! 「……ちょっと! 式の途中に何作ってんですか!」 「何って……紙飛行機」 「ちょっと声大きい……ていうか、紙飛行機だっていうのは分かってるわ!」
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