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三人の存在は教師たちに良い印象を持たれていなかった。しかし、生徒が生徒のために何かしてあげられないかと苦悩している。ここで教師が何もしないのは間違っていると、教師たちで話し合った結果であった。
教頭は再度楠からマイクを渡される。「まったく」と漏らし、楠のように適当な口調ではなく、しっかりとその場に待機するように放送した。
これで心配はないと、響生、比奈、楠の三人は準備に取り掛かった。
◇
一度閉まった幕が再び開かれたとき、そこには見慣れたドラムに囲まれている比奈、ベースを持った響生がいて、見慣れないギターを持った楠先生がいた。
楠先生からあの手紙を二人に渡したと言われ、響生と比奈との接触は控えていた。二人も私を避けているようだった。二人は呆れたんだ、こんな嘘つきの私に。
それから何があってこうなったのかはわからない。けど、これからライブをするらしい。最後に二人の演奏を見れるならこれ以上のことはない。
周りでは状況をやっと飲み込んできた生徒たちが「比奈ちゃーん!」「響生いっけー!」などの声援が飛び交っていた。もうすっかりあのバンドはこの学校に浸透していた。その様を下から見上げていることに、胸が痛くなった。
隣からクラスメイトの女子が「凪は行かないの?」と聞いてくる。周りも私の存在に気づいたようで「凪ちゃん早く早く!」と言われる。
やめて、それ以上なにも言わないで。心の中でそう叫んでいた。すると、ザザッとマイクが入る。
「みんな、凪は今日体調が悪いけん休みや。代わりに楠先生がギターしてくれるで!」
「いやー、どうもどうも」
先生が手を挙げていると、生徒たちから容赦のない怒号が飛んでくる。「ふざけんな、おっさんはお呼びじゃねぇんだよぉ!」と。さすがの先生も心に効いてきたのか、舞台の端に寄ってしまった。
「そー言わんといて。みんなの言う通りおっさんやけど勘弁したってや」
「現役JKにおっさんって言われるのは結構くるものがあるな…」
「わ、私は若いと思いますよ、先生!」
比奈がフォローに入ると、先生は徐々に回復していった。
演奏前の前口上のようにペラペラと繰り広げられるトーク。やっぱり響生はバンドのリーダーに向いてたんだ。もう有名人みたいな堂々っぷりでびっくりしていた。
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