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2月。
一年で一番寒い気がするこの季節に、私、比田井 千代子の心は前例が無いくらい温まっていた。
想い続けたとある夢。
高校を卒業する前に、それを叶えるって決めたから。
「おはよ、真菓。ちょっとお願いがあるんだけど」
「なんだよ、お願いって」
朝登校するなり、先に教室に居た同級生の男子の肩を叩く。
彼は振り向き、いつものように挨拶をすると体をこちらに向けた。
彼は成瀬 真菓。
私の小学校からの知り合いで、高校までずっと一緒の友達。
いわゆる、幼馴染。
真菓って可愛い名前に反発してるのか、いつも男の子って感じの服装をしてる彼。
容姿も性格も悪くなく、女の子からは結構人気がある。
それはいいとして。
今回のお願いは、真菓にしか頼めない事。
「また料理教えて。あまーいお菓子!」
「…たまには他の女子に頼めよ」
「えぇ?だって真菓が一番上手なんだもん」
私は、良く真菓にお菓子とか料理とかを教えてもらってる。
彼は特にお菓子作りが最高に旨い。
綺麗だし、可愛いし、美味しいし。
なんてたって、彼はパティシエを目指してる。
ただの夢じゃなくって、なんかのコンテストに参加したときにどっかの専門学校から声がかかったとか、そういうレベルの話。
どうせお菓子作りをするなら、美味しいものを作りたい。
教えるのも上手な彼には、いつもお世話になってる。
「だからさ、ね?」
「何がだからなんだよ。…まぁ、いいけど」
私はガッツポーズをする。
これで、私の小さな夢も叶いそうだ。
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