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「池面は見たことあるか?」
池面は眉間に皺を寄せ顎に手を当てて、ゆっくりと首を横に振る。その姿すら様になっている。
「バレンタインチョコレートをリアルで見るのは俺も初めてだ。まさかこんなところでお目に掛かれるとはな」
「お前でも経験ないのか……、尚更何故俺のところなんかに」
謎は深まるばかり。しかし事の重大さは、単にバレンタインチョコレートが俺の元に届いたことが原因ではない。そう、バレンタインチョコレートがこの場に存在していることが何よりの問題なのだ。
ここにいる全員が知っていて避けていたこと、委員長が核心を突く一言を述べる。
「でもここ、……男子校だぞ?」
「ああああああ!ずっとそれだけは言わないで欲しかったのに!」
頭を抱えて嘆く。
そうだよ!うち男子校だよ!なのになんで俺のところにバレンタインチョコレートがあるんだよ!誰だよこんな悪質なことしたやつ!
「ま、まぁ落ち着け山本。もしかしたら本当に女子かもしれないだろ?」
「女子って誰だよ、丸米!この学校にいる女は俺らの担任と保険医だけだろ!どっちも年増だぞ!」
「愛に年齢は関係ないぜ?」
「こんな時までイケメンな台詞吐くなよ、池面!それに俺に手出したらあいつら犯罪だからな!」
「そういえば隣のクラスのやつが山本のこと可愛いとか言ってた」
「それが一番最悪だよ、委員長!絶対止めて!」
どれも最悪だけど!でもずっと考えていたけれど、そういうことしか思いつかない。
重苦しい沈黙が流れる中、池面が一つの提案をする。
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