第三章 崩れゆく日常

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 病院の受付で、彼女のいる場所を聞き、部屋の前までやってきた。  305号室 宮園咲良 と書かれた扉を、緊張のせいか少し控えめにノックする。  すると中から、女性の声が聞こえた。 「はい、 どちら様?」 「あ、あの、咲良さんのクラスメートの篠崎といいます」  すると、部屋の扉が開き、おそらく彼女の母親らしき人が出迎えてくれた。  彼女は母親似なのだろう、顔全体のつくりが、非常に似ていて、とても綺麗な女性だった。  僕はどうぞと言われ、部屋の中に足を踏み入れた。 病院独特の薬品のにおいが、鼻につんときた。 「咲良の学校のお友達かしら?」 「は、はい」 「そう……きてくれてありがとう。 今、この子寝ているけど、どうぞ」 と、ベッドの近くの椅子に案内され、僕は腰をかけた。  母親は気を利かせてくれたのか、部屋から出て行った。  僕は、二度目の彼女の寝顔を、じっと見つめた。 顔色は以前にまして青白く、生気がないようにみえた。
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