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難しい事はよくわからなかったが、どうやら心臓に腫瘍が見つかった、それも悪性の。
気づけば咲良は家にいた。 あれから記憶が曖昧で、どうやって帰ってきたのかわからない。
あまりにもショックで、現実を受け止められない咲良の瞳から、涙が溢れた。
なぜだろう、なぜ私がこんな目にあわなきゃいけないのだろうか? と、咲良は嘆いた。
「咲良」
悲しみに打ちひしがれる咲良に、両親が話しかけた。
「咲良……大丈夫か」
恐らく、母親から全てを聞いたのだろう。悲痛な面持ちで、父親が咲良に声を掛けた。
「咲良、しっかりと気を持て。 まだ、一年もあるんだ」
「まだ一年って、あと一年しかないんだよ!」
「なんで!なんで、私死ななきゃいけないの!?」
咲良は、自制が効かないほどの怒りと悲しみで叫び、子供のように顔を歪めて泣き出した。
そんな咲良を、母親は涙を流しながら抱きしめた。
父親も、目元に涙を浮かべながら、咲良に話しかけた。
「咲良、あと一年だ。 やりたい事、したい事を全てやりなさい 。 父さん達も、全力で叶えてやる」
そして、咲良はぼそっと呟いた。
「私……高校に行きたい」
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