第一章 出会い

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 桜並木の綺麗な景色の中、僕は全速力で走っていた。  僕の名前は、篠崎 陽汰。今日から都内の公立高校に通う、ピカピカの一年生だ。  なのに寝坊するなんて最悪だ。昨日不安と緊張で眠れなく、気づいたときには時計の針が8時半を過ぎていた。僕の家から学校までは20分、入学式は9時から。急いで支度し家を出た。    本来ならこの満開の桜を満喫しながら歩く予定が、それどころではない。初日から遅刻だなんて絶対に嫌だ。そんなふうに思いながら走っていた僕の目に一人の女の子が見えた。  その少女はひときわ綺麗に咲いている桜をじっと見上げている。僕と同じ学校の女子の制服ということは、きっと彼女も同じ新入生だろう。  僕は遅刻が心配で彼女に声をかけた。 「ねえ、君も新入生でしょ? 急がないと遅刻しちゃうよ?」  彼女がゆっくりと振り向いた。 その瞬間、僕の時が止まった。  
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